小路幸也「フロム・ミー・トゥ・ユー (8) (東京バンドワゴン)」 [読書]
「東京バンドワゴン」シリーズの8作目。今回は短編形式。
いつもの登場人物が1話ごとに主人公をつとめ、本編の過去のちょっとした物語を紡ぎます。
そして、今回もウルッとくる箇所多数。昨日の帰宅時の電車内でも2回泣きそうになった。もちろん悲しい「ウルッ」ではなく、温かい「ウルッ」です。心のささくれが修復されるような「ウルッ」です。
このシリーズの登場人物に悪人はいなく、いろいろなご都合主義な物語は8作全てに共通しています。
でも、だからこそこのシリーズは大事な物語です。
家族の繋がりが薄くなった昨今、家族を大切にしましょうって憲法に加えることで家族の絆を深めることができると馬鹿なことを政治屋の方々は努力しています。しかし、そんなことで家族の絆は深まりません。また、だからと言ってこのシリーズを読めば深まるなんて単純なことも言いません。
ですが、このシリーズにあるような人との「縁」を少しずつみなで思い出すことが大事である、とは言えます。
このシリーズは最後のページに同じ言葉が書いてあります。
「あの頃、たくさんの涙と笑いをお茶の間に届けてくれたテレビドラマへ。」
毎回、最初から読んで、最後のこの言葉を読むのが楽しみです。
この「あの頃」という、作者が指す時代。まだ人と人の繋がりというものが現実のものとして目の前に見えたギリギリの時代。もう手遅れだとは思いたくないものです。
2013-04-28 00:09
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